◆◆ 霧落峠の謎解き解説 (友野詳)  このたびは『霧落峠』をプレイしていただき、ありがとうございます。  もしも、まだプレイしていらっしゃらないのであれば、回れ右して、まず遊んでからこの先をお読みください。  よろしいですか?  では、犯人を推理する導線、エンディングの分岐を左右する「金山の手がかり」について解説しておきます。 ●犯人の特定  まず、「遺体のようす」「遺体の周辺のようす」から、万吉が上から落ちてきたことがわかります。  これによって、万吉を殺す機会があったのは、上からやってきた五十郎と一心斎、ということになります。ほかの2人について霧の中での早業殺人を考えられないことはないでしょうが、裏付けになる証拠はありません。  また同じく遺体を調べることで、万吉は、針で急所を刺されて殺されたことがわかります。この技術を持っている、つまり殺害手段があるのは、千代と一心斎です。五十郎の小柄は、わざと誤解を招く書き方をしていますが、サイズが違っていることはわかるはずです。  そして、調べてゆくうちに万吉が「隠密の手先」であることもわかります。それぞれみんな、正体を隠していますが、それを突き止めることができれば、動機があるのは、この国の隠密狩りである八百蔵か、始末人である一心斎だとわかるでしょう。千代が、盗賊時代の財宝をめぐって争ったという憶測もできますが、やはり確たる裏付けはありません。一心斎が始末人であることも、消去法による特定や五十両という大金を持っているなどの曖昧な手がかりからになりますが、ほぼ推定できるはずです。  これらをそろえて考えれば、機会、手段、動機のすべてがそろっているのは一心斎、ということになります。  また万吉の持ち物を持っているのが一心斎なのも、決定的な証拠といえます。 ●キーアイテム「隠し金山への手掛かり」  隠し金山の手がかりについては「盗賊とお宝の噂」にある「点と線で地図を描く」でしょう。  ですから、あやしげなのは、八百蔵の持ち物にある「複雑な記号が書きこまれた帳面」だと思われるかもしれませんが、これはミスディレクションです。八百蔵の設定書には「隠し金山のありかは記されていない」と明記されています。  帳面が「万吉が遺した隠し金山の手がかり」でありえないのは、八百蔵が犯人ではなく、万吉から持ち物を奪うタイミングがなかったことからわかります。  となれば、残る品物のうち「点と線が描かれていそう」「万吉の持ち物であった形跡がある」のは「星空が象嵌されている」「万吉の手ぬぐいに珊瑚の残りカズがついていた」ことから、珊瑚のついた櫛、ということになります。  犯人である一心斎が持っているから、これが万吉の持ち物だったはずと考えることもできますが、万吉の持ち物を持っているから一心斎が犯人という論理もありえるでしょう。だからこそ、間違えやすい設定にしてあります。 ●キャラクターの背景  もちろん五十郎と八百蔵は父子です。それによって、お互いがどんな感情を抱くかは、プレイヤーのみなさんにお任せします。  瀕死の千代を救ったのは、通りかかった一心斎です。理由は特になく、設定書にもあるように単なる気まぐれです。これも、それをどう感じるかはプレイヤーのみなさん次第です。 ●ネーミングについて  以下、完全な余談です。  まず「浪人の名前なら●十郎か兵庫か大吉か、それとも大平だよな」というのが時代劇ファンとしての発想です。で、「峠が舞台だから●十郎のほうにしよう」と決めました。わかりますかね? みなさん、黒澤映画だと思ってらっしゃるでしょうが、三船は三船でもテレビシリーズ『荒野の素浪人』の峠九十郎が命名の元ネタです。まあ、三船敏郎が演じた素浪人キャラクターなら、ミスターの旦那がいちばん好きなんですが。  あとのキャラクターは「十」という単語から連想して、数の単位を使って、覚えやすくネーミングしてゆきました。なので、特にオマージュ先というのはありません。「何がネタなんだろう?」と考えてらっしゃる方がおられると悪いので、ここで解説しておきます。